※同棲設定/情事後
とっても幸せな夢を見ていたような気がする。でも、どんな夢を見ていたのか、まったく思い出せない。身体を起こすと、何も身に着けていない素肌に隙間風が染みる。隣には俺と同じく、何も身に着けていない状態で霧野先輩がスヤスヤと、気持ちよさそうに眠っている。
思い出すだけでも恥ずかしい、昨日のこと。どちらから誘ったのかも、これが何回目の行為なのかも忘れてしまったけど、昨日の夜、先輩に抱かれた。
先輩が濃い、濃い、オトナのキスを何度も求めてきた。俺もそれに応じた。行為の途中、余裕のない俺に何度も「好き」「愛してる」って、優しく言ってくれた。余裕がなさすぎて、俺はただ頷くことしか出来なかったけど、俺が先輩のこと好きで好きでたまらないってこと、先輩にはちゃんと伝わってますよね?
霧野先輩の寝顔。毎日のように見てるのに、見てて飽きない。しっかりと閉じられた、瞳。キュッと閉じられた薄い唇。シーツに散らばった桃色の綺麗な長い髪だとか。日に焼けた、薄い筋肉のついた身体だとか。そういうもの、全部含めて、見てて飽きない。
「寝ててもカッコイイなんて、ズルイよな」
起きててもカッコイイのに。眠っていても、こんなにも魅力的だなんて。
先輩の熱を持った首筋から鎖骨のラインへと、手を伸ばす。起こしちゃうかな。なんて。こういうことやって、先輩を起こしても、先輩は怒らない。優しく微笑んで、「どうした?」なんて、聞きながら、俺を再び夢の中へと引きずりこむ。
そういう先輩のベッタベタに甘いところが好きだ。そりゃあ、先輩も人間だし、仏じゃないし、悪いことしたら怒ったりはするけど。甘えたいときに甘やかしてくれるところ。大好きだ。だから、昨日みたいに身体を任せることができる。
「ん、・・・・・・かりや」
先輩が大きな大きな、空色の瞳を開けた。そして、舌ったらずな声で俺を呼ぶ。先輩が朝一番に見たものが俺であること。完全に目の覚め切ってない、眠そうな先輩を見れるのが俺だけであること。隣にいる俺だけの特権。
「もう起きるのか?」
「いえ、まだここに居ますよ」
「そっか、じゃあよかった」
グイ、と手首を掴まれ、再び布団の中に引きずりこまれる。そうしてたどり着いた先は先輩の胸の中。肌と肌が直接触れ合って、温かい。少し湿ったような感覚。それでも何故だか落ち着くから好きだ。
ぎゅう、と背中に腕を回されて、先輩と完全に密着する形になる。先輩の体温と一緒に、胸の鼓動が聞こえる。それを子守唄のように感じながら目を閉じた。
次もまた、幸せな夢を見れる。そんな根拠のない確信を持ちながら。
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以前やっていたサイトから持ってきてしまいました。
専門学生の頃に別名義で書いていたものです。 2016/6/25